比較的体力のある人で驚きやすく、精神不安、不眠、へその周辺に動悸、倦怠感、頻尿、便秘の人に用います。不眠症、神経症、高血圧、更年期障害、てんかん、バセドー病などに応用します。柴胡加竜骨牡蛎湯は、漢方の精神安定剤といえます。女性の更年期障害、神経症、動悸に用いられます。不安、イライラ、驚きやすい、胸脇苦満などの場合に有効です。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)の効能
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柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)の解説
神経質で精神的に不安定な人に
比較的体カはあるが、神経質で、ささいなことが気になって、抑うつ、不安、イライラ、不眠などがあるような、精神的に不安定な人に用いられる薬です。
神経症、不眠症、うつ状態、神経性の心悸亢進、子どもの夜泣き、勃起障害などがあるときに処方されます。
あるいは、高血庄や動脈硬化症、慢性腎臓病などにともなう症状の改善に使われることもあります。
診察では、肋骨の下が張って押すと痛みがある「胸脇苦満」や、へその上あたりに拍動を感じる「臍上悸」などがポイントになります。
柴胡加竜骨牡蛎湯のイライラを鎮める作用
イライラする症状は、漢方では「気」の異常や、「肝」の働きの乱れととらえられます。なかでも、「気うつ」が主にみられる場合にこの漢方薬がよく用いられます。
この漢方薬の成分の「竜骨」は古代の人型哺乳類の化石、「牡蛎」はカキの貝殻です。これらには不安やイライラを鎮める働きがあります。また、「柴朋」は怒りっぽさや筋肉の緊張、代謝などを改善します。
まれに間質性肺炎や肝機能障害、黄疸が起こる例があります。「大黄」を含む場合は下痢に注意します。
適応される症状
- 更年期障害
- 神経症
- 高血圧症
- 動脈硬化
- ED(勃起障害)
配合生薬
配合生薬の効能
柴胡(さいこ)
柴胡は漢方治療で解熱、消炎、鎮静、鎮痛薬として多用される重要生薬の一つです。主成分としてサイコサポニンA~Fなどのサポニンを豊富に含み、動物実験で上記薬効を裏付ける多くのデータが報告されている他、臨床的に肝機能障害の改善作用が認められています。
漢方では主として胸脇苦満、風邪、咽頭の痛み、気管支炎、肺炎などで炎症熱のあるもの抗炎症などを目標に慢性肝炎、慢性腎炎などに処方されます。
一時柴胡を配合した漢方薬が、一部の肝機能障害患者で副作用と思われる症状を示し、問題になつたことがありますので、他の医薬品と併用する場合は医師とよく相談してください。
半夏(はんげ)
半夏には水分の停滞や代謝障害の改善作用や、鎮吐効果(吐き気止め)があります。特に胸腹部に突き上げるような膨満感があり、お腹がゴロゴロなる場合やのどの痛みがある場合に用います。
しかし、えぐみが強く、飲みにくくてかえって吐き気を催すこともあるので、単独で利用されることはまれで、漢方では吐き気をともなう胃腸障害や、つわりの適用処方などに広く配合される重要生薬の一つです。
鎮吐作用は、有効成分のアラビナンを主体とする多糖体成分によると考えられています。
茯苓(ぶくりょう)
茯苓には、利尿、強心、鎮痛、鎮静作用があります。漢方処方では利尿剤、利水剤、心悸亢進、胃内停水、浮腫、筋肉の痙攣などに茯苓を配合しています。
秩苓とは漢名で、植物名をマツホドと呼び、松の根に寄生するサルノコシカケ科の菌核です。秩苓は菌核に多糖類のβパヒマンを、それにテルペノイドやエルゴステロールなどの成分を含んでいます。
最近の報告では多糖類のパヒマンから誘導されたパヒマランに、細胞性免疫賦活作用が認められています。サルノコシカケ科に共通の抗腫瘍作用とともに、今後の研究が期待されています。
茯苓は民間薬としては使われず、まれに利尿を目的に煎液を飲む程度です。漢方でも配合薬としては汎用されますが、単独では用いません。
桂皮(けいひ)
桂皮には、発汗作用 健胃作用 のぼせを治す作用 鎮痛作用 解熱作用があります。漢方では、頭痛、発熱、悪風、体痛、逆上などを目的に使います。
主成分は、カツラアルデヒドを含む精油です。
風邪をひいて胃腸や体が丈夫でない人は葛根湯(かっこんとう)でなく、桂皮を配合した桂枝湯(けいしとう)を服用すると良いでしょう。
民間療法として桂皮は健胃、整腸に用いられ、桂皮を煎じて食前に飲みます。また桂皮の葉を陰干しにし布袋に詰めて風呂に入れると、精油の作用で体をあたためる効果があります。
黄ごん(おうごん)
漢方の中でも最もよく利用されるものの一つで、主に炎症や胃部のつかえ、下痢、嘔吐などを目的に使用されています。
黄ごんエキスは、炎症に関与する諸酵素に対して阻害作用を示しています。これらの作用は、この生薬中に豊富に含まれるフボノイドによるもので、特に有効成分バイカリンやバイカレイン、およびその配糖体はプロスタグランジンらの生合成やロイコトリエン類などの炎症物質の産生を阻害します。
その他、抗アレルギー(ケミカルメジエーターの遊離抑制)、活性酸素除去、過酸化脂質形成抑制、トランスアミナーゼの上昇抑制による肝障害予防、および胆汁排泄促進による利胆作用などが確認されています。
また、ヒト肝ガン由来培養肝がん細胞の増殖を抑制する他、メラノーマの培養細胞の増殖を抑制することより抗腫瘍効果が期待されています。漢方で多くの処方に配合されていますが、単独で用いられることはありません。
大棗(たいそう)
大棗は滋養強壮、健胃消化、鎮痛鎮痙、精神神経用薬として、多くの漢方処方に配合されています。
含有サポニンのジジフスサポニンによる抗ストレス作用があり、アルカロイド成分リシカミンのおよびノルヌシフェリンなどによる睡眠延長作用、多糖体ジジフスアラビナンによる免疫活性などが報告されています。
その他、サイクリックAMP(環状アデノシン一リン酸)があります、サイクリックAMPは脂肪組織を構成する中性脂肪の分解を促します。また、含有成分フルクトピラノサイドには抗アレルギー作用が認められています。
人参(にんじん)
漢方治療において最も繁用される有名生薬の一つで、古くから高貴な万能薬としてよく知られています。漢方では強壮や胃腸衰弱、消化不良、嘔吐、下痢、食欲不振などの改善を目標に幅広く処方されます。
この生薬の特異成分であるダマラン系サポニン(主としてギンセノシドRb、Rg群)は動物実験で、強制運動に対する疲労防止、および疲労回復、抗ストレス作用、ストレス潰瘍防止、免疫活性およびアンチエイジングなどを示し、各種機能の低下を抑制する作用が認められています。
その他、抗炎症、抗悪性腫瘍、肝機能改善作用、血糖降下作用、血中コレステロールおよび中性脂肪の低下作用なども確認されています。また、記憶障害改善(抗痴呆)効果が示唆されています。
竜骨(りゅうこつ)
竜骨は、恐竜や古代のマンモスゾウ、サイ、ウマ、ウシなどの化石です。漢方ではこの竜骨をカキの貝殻である牡蛎と配合して、精神衰弱や不眠症、神経性心悸亢進症、高血圧、分裂症、狭心症などを目的に処方されます。
「牡蛎と合わせて使うところに薬効を解くポイントがあるのかもしれない」と、富山医科薬科大の難波恒雄教授は記しています。
竜骨の成分はほとんどが炭酸カルシウムで、ほかにリン、カリウム、ナトリウム、アルミニウム、珪素などの酸化物から成り立っている。微量元素としてはマンガン、マグネシウム、鉄なども検出されていますし、アラニンやグリシンというアミノ酸も含みます。
牡蛎(ぼれい)
牡蛎は胸腹部の動悸、精神不安、不眠、寝汗などの症状に配合されています。漢方ではかなり多用される生薬です。
主成分は炭酸カルシウムで、ほかにリン酸塩、ケイ酸塩などの無機塩を含みます。またグリコーゲン、タウリン、グルタチオン、アミノ酸、ビタミン群などが豊かです。牡蛎の抽出物が血糖値を下げることも認められており、成人病にも適しています。
生姜(しょうきょう)
生姜は優れた殺菌作用と健胃効果、血液循環の改善効果、発汗と解熱効果があります。漢方では芳香性健胃、矯味矯臭、食欲増進剤の他、解熱鎮痛薬、風邪薬、鎮吐薬として利用されています。
辛味成分のショウガオールやジンゲロールなどに解熱鎮痛作用、中枢神経系を介する胃運動抑制作用、腸蠕動運動充進作用などが有ります。そう他、炎症や痛みの原因物資プロスタグランジンの生合成阻害作用などが認められています。
大黄(だいおう)
大黄は瀉下(下剤)、消炎性健胃薬として、常習性便秘症に使用されます。
ジアンスロン成分であるセンノサイドA-Fに瀉下作用が認められます。センノサイドA-Fは腸内細菌によって強い瀉下活性を示すレインアンスロンに変換されるからです。
フェノール配糖体の一種リンドレインには消炎、鎮痛作用が認められています。またタンニン成分に、血中尿素窒素(BUN)低下作用が報告されていることから、腎不全改善効果も期待されます。
漢方では、特に実証の人(体力がある人)の便秘薬として他の生薬と配合して高い効果をあげていますが、大黄には子宮収縮促進作用や骨盤の充血増長作用があるため、産前、産後や月経期間中は使用しない方がいいです。
更年期障害(こうねんきしょうがい)に処方されるその他の漢方薬
実証
- 三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
女性の更年期障害や高血圧症状に用いられます。のぼせ、肩こり、耳鳴り、不眠、不安などが目立つ場合に 選ばれます。 - 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
女性の更年期障害、月経困難症に用いられ、下腹部の抵抗感(お血)、頭痛、のぼせ、めまい、便秘、足腰の 冷えなどに効果的です。 - 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
女性ののぼせ、不眠症、神経症、イライラ、顔色が赤い、高血圧症状などに用いられます。 - 通導散(つうどうさん)
女性の更年期障害、月経不順に用いられます。下腹部に抵抗感、圧迫感のあるお血症状や便秘のほか、頭痛 、のぼせて顔色が赤い、不眠などがある場合に効果的です。 - 三物黄ごん湯(さんもつおうごんとう)
女性の更年期障害、自律神経失調症、神経症、不眠に用いられます。口の渇き、熱っぽい、手足がほてる、 手足の皮膚が紅潮するなどの症状がみられるときに使われます。
中間証
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
お血のある女性の更年期障害や婦人科疾患に用いられます。血色不良、下腹部痛、足の冷え、のぼせ、肩こ り、頭痛、イライラなどがある場合に効果があります。 - 加味逍遙散(かみしょうようさん)
更年期障害で、もっとも多く処方されるものです。女性の更年期障害、月経不順・月経困難症、自律神経失 調症などに用いられます。疲れやすい、不安、不眠、イライラ、頭痛、のぼせ、肩こり、便秘、冷え症など 、さまざまな症状に対応しています。 - 女神散(にょしんさん)
女性の更年期障害、月経不順、産前産後の神経症などに用いられます。のぼせ、めまい、みぞおちのつかえ 、胃もたれなど、さまざまな症状やはっきりしない不決感などに対応しています。とくにのぼせやほてり、 めまいをともなうときに有効です。 - 温清飲(うんせいいん)
女性の更年期障害、月経不順、血の道症などに用いられます。目標症状は不安、のぼせ、皮膚の乾き、出血 傾向などです。 - 甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
女性の自律神経失調症、神経症などに用いられます。悲観的な言動、興奮、不安、不眠などが目立つときに 選ばれます。 - 五積散(ごしゃくさん)
女性の更年期障害、神経痛、冷え症などに用いられます。胃腸が弱く、冷えると腰、関節、下腹部、足が痛 む、疲れやすいなどの症状があるときに選ばれます。 - 川きゅう茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)
女性にみられるかぜ初期の頭痛や、突発性の頭痛に用いられます。頭痛のほか、めまい、寒け、発熱など、 典型的なかぜ症状にも有効です。
虚証
- 温経湯(うんけいとう)
女性の更年期障害、月経不順・月経困難などに用いられます。口の渇き、下腹部の冷えと痛み、おりもの、 下痢、頭痛、腰痛、肩こりなどがあるときに効果的です。 - きゅう帰調血飲(きゅうきちょうけついん)
女性の更年期障害、月経不順、産後の低下した体力の改善などに用いられます。食欲不振、下痢、便秘、腹 痛、頭痛、めまい、のぼせなど、さまざまな症状に対応しています。 - 柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
女性の更年期障害、神経症、不眠症、心臓神経症などに用いられます。やせ型で血色不良、冷える、口が渇 く、動悸や息切れなどの症状があるときに有効です。 - 四物湯(しもつとう)
胃腸障害がない女性の更年期障害、月経不順、冷え症などに用いられます。血行をよくする効果があります 。皮膚がカサついて色つやが悪い、手足の冷え、貧血、目のかすみがある場合に選ばれます。 - 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
更年期障害、貧血、月経不順などに用いられます。足腰の冷え、貧血、疲労感、血色不良、下腹部痛、頭重 感、肩こりなどがある場合に効果的です。 - 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
胃腸が弱く、冷え症がある女性で、更年期障害の症状のなかでも頭痛、めまいが強い人に用いられます。そ のほか、肩こり、頭重感、吐き気、食後の手足のだるさにも有効です。 - 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
女性の肥満症、関節痛、多汗症、むくみなどに用いられます。水ぶとりで色白、むくみやすく、疲れやすい 、尿量減少などの症状があるときに選ばれます - 抑肝散(よくかんさん)
女性の神経症、不眠症、などに用いられます。神経が過敏で興奮しやすい、怒りっぽい、まぶた や顔の筋肉がけいれんするなどの症状がみられるときに有効です。 - 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
更年期障害の症状のなかでも、立ちくらみやめまいの強い人に用いられます。そのほか、動悸、のぼせ、尿 量減少などがあるときに効果があります。
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「証」とは体力、体質、症状などから患者さんの状態を総合的に観察した診断結果のことです。
- 実証は生理機能が高まった状態を意味して、外見は健康そうに見えます。
- 虚証は体力がなく、生理機能が衰え、抵抗力も低下した状態を意味します。
- 中間証は実証または虚証のどちらも偏らず、それぞれの特徴を半分ずつもつ場合を意味します 。
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