-女神散(にょしんさん)-


女神散(にょしんさん)の効能

体力中等度以上で、のぼせと、めまいをともなう強い血の道症(更年期障害)の人に用います。神経症、月経不順、不眠症、自律神経失調症、更年期障害に広く応用されます。女性の更年期障害、月経不順、産前産後の神経症などに用いられます。のぼせ、めまい、みぞおちのつかえ、胃もたれなど、さまざまな症状やはっきりしない不決感などに対応しています。とくにのぼせやほてり、めまいをともなうときに有効です。


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適応される主な症状

配合生薬

配合生薬の効能

香附子(こうぶし)

香附子は主に生理痛、生理不順に効果があります。これは有効ン成分セスキテルペニイド、ことにαーシペロンの鎮痛作用、子宮弛緩作用によります。

また、慢性胃炎、十二指腸潰瘍、神経性胃炎などにも広く利用されますが、やはりαーシペロンに炎症物質のプロズダグランジン生合成阻害作用があり抗炎症効果を現すためです。

川きゅう(せんきゅう)

川きゅうには補血、強壮、鎮痛、鎮静があります。漢方では貧血、冷え性、生理痛生理不順など婦人科の各種疾患に利用されています。

有効成分のリグスチライドなどのフタライド類に筋弛緩作用や血小板凝集阻害作用が有ります。またクニジリットには、免疫活性作用が認められています。

古い医学書には性病による各種皮膚疾患、化膿性のできもの、疥癬(かいせん)などを治すと記載されています。

蒼朮(そうじゅつ)

朮は体内の水分代謝を正常に保つ作用があり、健胃利尿剤として利用されています。特に胃弱体質の人の下痢によく効き、胃アトニーや慢性胃腸病で、腹が張るとか、冷えによる腹痛を起こした場合などにもいいです。

日本では調製法の違いによって白朮(びやくじゅつ)と蒼朮(そうじゅつ)に分けられます。いずれも同じような効能を示しますが、蒼朮は胃に力のある人の胃腸薬として使い分けられています。

両者の主成分は、精油成分のアトラクチロンと、アトラクチロジンです。ちなみに、白朮には止汗作用があるのに対して、蒼朮は発汗作用を示します。朮は漢方治療では、多くの処方に広く利用される生薬の一つです。

当帰(とうき)

婦人病の妙薬として、漢方でひんぱんに処方される重要生薬の一つです。漢方では古来、駆お血(血流停滞の改善)、強壮、鎮痛、鎮静薬として、貧血、腰痛、身体疼痛、生理痛生理不順、その他更年期障害に適用されています。

茎葉の乾燥品は、ひびやしもやけ、肌荒れなどに薬湯料として利用されています。鎮静作用はリグスチライド、ブチリデンフタライド、セダン酸ラクトン、サフロールなどの精油成分によります。また有効成分アセチレン系のファルカリンジオールに鎮痛作用があります。

駆お血効果を裏付ける成分として、血液凝固阻害作用を示すアデノシンが豊富に含まれています。また、アラビノガラクタンなどの多糖体に免疫活性作用や抗腫瘍作用が認められ、抗ガン剤としての期待も、もたれています。

黄ごん(おうごん)

漢方の中でも最もよく利用されるものの一つで、主に炎症や胃部のつかえ、下痢、嘔吐などを目的に使用されています。

黄ごんエキスは、炎症に関与する諸酵素に対して阻害作用を示しています。これらの作用は、この生薬中に豊富に含まれるフボノイドによるもので、特に有効成分バイカリンやバイカレイン、およびその配糖体はプロスタグランジンらの生合成やロイコトリエン類などの炎症物質の産生を阻害します。

その他、抗アレルギー(ケミカルメジエーターの遊離抑制)、活性酸素除去、過酸化脂質形成抑制、トランスアミナーゼの上昇抑制による肝障害予防、および胆汁排泄促進による利胆作用などが確認されています。

また、ヒト肝ガン由来培養肝がん細胞の増殖を抑制する他、メラノーマの培養細胞の増殖を抑制することより抗腫瘍効果が期待されています。漢方で多くの処方に配合されていますが、単独で用いられることはありません。

桂皮(けいひ)

桂皮には、発汗作用 健胃作用 のぼせを治す作用 鎮痛作用 解熱作用があります。漢方では、頭痛、発熱、悪風、体痛、逆上などを目的に使います。

主成分は、カツラアルデヒドを含む精油です。

風邪をひいて胃腸や体が丈夫でない人は葛根湯(かっこんとう)でなく、桂皮を配合した桂枝湯(けいしとう)を服用すると良いでしょう。

民間療法として桂皮は健胃、整腸に用いられ、桂皮を煎じて食前に飲みます。また桂皮の葉を陰干しにし布袋に詰めて風呂に入れると、精油の作用で体をあたためる効果があります。

人参(にんじん)

漢方治療において最も繁用される有名生薬の一つで、古くから高貴な万能薬としてよく知られています。漢方では強壮や胃腸衰弱、消化不良、嘔吐、下痢、食欲不振などの改善を目標に幅広く処方されます。

この生薬の特異成分であるダマラン系サポニン(主としてギンセノシドRb、Rg群)は動物実験で、強制運動に対する疲労防止、および疲労回復、抗ストレス作用、ストレス潰瘍防止、免疫活性およびアンチエイジングなどを示し、各種機能の低下を抑制する作用が認められています。

その他、抗炎症、抗悪性腫瘍、肝機能改善作用、血糖降下作用、血中コレステロールおよび中性脂肪の低下作用なども確認されています。また、記憶障害改善(抗痴呆)効果が示唆されています。

檳榔子(びんろうじ)

檳榔子は健胃、消化、収斂(組織を引き締め、収縮させ、結束させる作用)、および駆虫薬として、消化不良、下痢、腹痛および条虫駆除に利用されています。

主成分であるアレコリン、アレカイジンなどのアルカロイドがコリン作動性(神経関係)に働いて、各種平滑筋の収縮、発汗、腺分泌充進作用を示しますが、これらの薬理作用はサイクリックGMP(環状グアノシン一リン酸)の上昇効果によると説明されています。

アレコリンはまた、動物実験で学習および記憶能力の増進作用がみられ、痴呆症の改善効果が期待されています。

タンニン成分のアレカタンニンなどに、抗虫歯菌作用が認められています。また、未熟種子の乾燥品煎液を、家畜などの条虫駆除剤とする他、ミミズやヒルの殺虫剤としても利用されています。

黄連(おうれん)

苦味健胃薬として、よく利用される重要な生薬の一つです。漢方では精神不安や胸のつかえ、腹部疼痛、下痢、嘔吐を目的に使用されます。

成分としては、アルカロイドが主体で、コプチジンやオウレニン、ベルベリン、パルマチンなどです。

ベルベリンは大腸菌、チフス菌、コレラ菌に対して殺菌作用を、黄色ブドウ球菌、淋菌、赤痢菌などに対して広範囲な抗菌作用を示すほか、抗炎症作用および肝障害改善作用をも示します。抗炎症作用はコプチジンにもみられます。

その他、熱水抽出エキスには、消化酵素の活性化、高コレステロール症状の改善、免疫細胞のマクロファージを活性化して免疫力を強化する作用、鎮静作用など多くの作用が報告されています。

甘草(かんぞう)

甘草は漢方治療で緩和、解毒を目的として、いろいろな症状に応用されますが、主として去痰、鎮咳、鎮痛、鎮痙、消炎などです。

有効成分のグリチルリチンには、痰を薄めて排除する作用があり、体内で分解するとグリチルレチン酸となって咳を止めます。

その他、グリチルリチンには多種多様の薬理効果が有り、消炎、抗潰瘍、抗アレルギー作用の他、免疫活性や、肝細胞膜の安定化、肝保護作用、肝障害抑制作用などが明らかにされています。

有効成分イソリクイリチンおよびイソリクイリチゲニンは糖尿病合併症の眼病治療薬として、また胃酸分泌抑制作用もあり胃潰瘍の治療薬として期待されています。

甘草はあまり長期服用しますと、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などの副作用が現れることがあるので、注意を要します。

丁子(ちょうじ)

丁子には健胃、食欲増進作用、胃痛や腹痛に対する作用があり、漢方ではしゃっくり抑制を目標に処方されます。

精油15~20%を含有しています。主成分として、フェノール類のオイゲノール、ガロタンニン、アセチルオイゲノールなどが含まれています。

木香(もっこう)

木香には、芳香性健胃、整腸、利尿、抗菌などの作用があります。漢方では、食欲不振や消化不良、婦人薬、精神神経などの薬に処方されます。

有効成分は、コスツノリド、デヒドロコスツスラクトンなどです。

コスツノリドとデヒドロコスツスラクトンには、アルコール吸収抑制作用や胃粘膜障害の抑制作用、胃排出能抑制作用、胆汁分泌促進作用などがあります。

漢方薬の使用上の注意

漢方薬の副作用

更年期障害(こうねんきしょうがい)に処方されるその他の漢方薬

実証

中間証

  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
    お血のある女性の更年期障害や婦人科疾患に用いられます。血色不良、下腹部痛、足の冷え、のぼせ、肩こ り、頭痛、イライラなどがある場合に効果があります。
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
    更年期障害で、もっとも多く処方されるものです。女性の更年期障害、月経不順・月経困難症、自律神経失 調症などに用いられます。疲れやすい、不安、不眠、イライラ、頭痛、のぼせ、肩こり、便秘、冷え症など 、さまざまな症状に対応しています。
  • 温清飲(うんせいいん)
    女性の更年期障害、月経不順、血の道症などに用いられます。目標症状は不安、のぼせ、皮膚の乾き、出血 傾向などです。
  • 甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
    女性の自律神経失調症、神経症などに用いられます。悲観的な言動、興奮、不安、不眠などが目立つときに 選ばれます。
  • 五積散(ごしゃくさん)
    女性の更年期障害、神経痛、冷え症などに用いられます。胃腸が弱く、冷えると腰、関節、下腹部、足が痛 む、疲れやすいなどの症状があるときに選ばれます。
  • 川きゅう茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)
    女性にみられるかぜ初期の頭痛や、突発性の頭痛に用いられます。頭痛のほか、めまい、寒け、発熱など、 典型的なかぜ症状にも有効です。

虚証

  • 温経湯(うんけいとう)
    女性の更年期障害、月経不順・月経困難などに用いられます。口の渇き、下腹部の冷えと痛み、おりもの、 下痢、頭痛、腰痛、肩こりなどがあるときに効果的です。
  • きゅう帰調血飲(きゅうきちょうけついん)
    女性の更年期障害、月経不順、産後の低下した体力の改善などに用いられます。食欲不振、下痢、便秘、腹 痛、頭痛、めまい、のぼせなど、さまざまな症状に対応しています。
  • 柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
    女性の更年期障害、神経症、不眠症、心臓神経症などに用いられます。やせ型で血色不良、冷える、口が渇 く、動悸や息切れなどの症状があるときに有効です。
  • 四物湯(しもつとう)
    胃腸障害がない女性の更年期障害、月経不順、冷え症などに用いられます。血行をよくする効果があります 。皮膚がカサついて色つやが悪い、手足の冷え、貧血、目のかすみがある場合に選ばれます。
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
    更年期障害、貧血、月経不順などに用いられます。足腰の冷え、貧血、疲労感、血色不良、下腹部痛、頭重 感、肩こりなどがある場合に効果的です。
  • 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
    胃腸が弱く、冷え症がある女性で、更年期障害の症状のなかでも頭痛、めまいが強い人に用いられます。そ のほか、肩こり、頭重感、吐き気、食後の手足のだるさにも有効です。
  • 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
    女性の肥満症、関節痛、多汗症、むくみなどに用いられます。水ぶとりで色白、むくみやすく、疲れやすい 、尿量減少などの症状があるときに選ばれます
  • 抑肝散(よくかんさん)
    女性の神経症、不眠症、などに用いられます。神経が過敏で興奮しやすい、怒りっぽい、まぶた や顔の筋肉がけいれんするなどの症状がみられるときに有効です。
  • 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
    更年期障害の症状のなかでも、立ちくらみやめまいの強い人に用いられます。そのほか、動悸、のぼせ、尿 量減少などがあるときに効果があります。

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漢方薬は、自分の証に合ったものをお選び下さい。

「証」とは体力、体質、症状などから患者さんの状態を総合的に観察した診断結果のことです。

  • 実証は生理機能が高まった状態を意味して、外見は健康そうに見えます。
  • 虚証は体力がなく、生理機能が衰え、抵抗力も低下した状態を意味します。
  • 中間証は実証または虚証のどちらも偏らず、それぞれの特徴を半分ずつもつ場合を意味します 。

「証」の判定は証の自己判定テストご利用ください。


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