-当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)-


当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)の効能

体力虚弱で、足腰が冷えて疲れやすく、貧血気味、頻尿、月経痛や月経不順、めまい、耳鳴り、動悸、肩こり、頭重などのある人に用います。月経不順、月経痛、流産癖、更年期障害、冷え症、腎臓病、不妊症、貧血、習慣性膀胱炎、浮腫、痔などに応用します。また当帰芍薬散は女性のための代表的な漢方薬で、安産の薬、安胎薬として妊娠時によく用います。更年期障害、貧血、月経不順などに用いられます。足腰の冷え、貧血、疲労感、血色不良、下腹部痛、頭重感、肩こりなどがある場合に効果的です。


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当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)の解説

女性向けのダイエット漢方薬「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」

肥満解消を訴える女性の約7割りがやせる必要がない人、つまり病的でない水太りの肥満の人たちです。太鼓腹で固太りの病的な肥満、つまり医師が「肥満症」と診断を下すような肥満は一部に過ぎません。たいていの人は病的でない肥満、いわゆる水太りなのです。

この「肥満症」の人によく用いられるのが、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)です。防風通聖散は体の中に過剰にたまった栄養が毒素となり、たくさんの毒がたまって起こる病気の治療を目的とした処方です。つまり、防風通聖散はやせるための薬ではなく、生活習慣病対策をしなくてはならない一部の人に向くダイエット漢方薬なのです。

現代人は昔と違って食べものが豊富になったため、栄養過多の状態に陥っている場合が多く、そのため栄養や体力が充満し過ぎて起こる不調に対して、その体内の余分なエネルギーや毒素を体外へ出さなくてはなりません。防風通聖散はそのための処方で、結局、体を冷やす方向でそれを実現しようとします。

やせるために防風通聖散を飲んでいたという女性が、慢性の膀胱炎に悩まされていた理由は、体を冷やす処方のせいかもしれません。膀胱炎は体の冷えが最も人きな原因だからです。

水太りの肥満を解消する当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

体内の水分代謝がよくないと、その水分によって体が冷え、しかも重量のある水がたまるので体重計のメモリが増える、これが水太りの原理です。栄養がいいので体の中に燃えるべきものはたくさんあるのに、運動不足で基礎代謝が下がってあまり燃えないわけですから、必然的に体重は増えます。

この悪循環によって、徐々に肥満に近い状態に陥るわけです。こういう人は摂取する食べものを少し控えて、体の中に火をつけて燃やし、水を抜けばいいのです。もちろん、漢方薬だけでやせるのは無理ですから、食べものの過剰摂取を抑えて適度な運動をすることはいうまでもありませんが。

この「水太りの肥満」に効果が期待できるのが、当帰芍薬散です。当帰芍薬散は別名「女性の漢方薬」といわれるほど婦人科系の病気によく用いられます。

この漢方薬は五臓のうち、脾(胃腸)の働きが弱いために栄養摂取が滞りがちで、比較的体力が乏しく体内に水がたまりやすくて冷え性かつ貧血気味、すなわち顔色は青白いという人に適しています。

そして月経痛、月経不順などの月経異常があり疲労感が強くめまい、肩こり、頭痛、腰痛、耳鳴りなどの症状を訴える女性によく用いられます。

こうした傾向がある女性の腰痛、足腰の冷え性、しもやけ、むくみ、しみなどにも有効です。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)の重要生薬「白朮(びゃくじゅつ)」

当帰芍薬散を飲むと胃腸障害を起こすとよくいわれます。

その理由はこの処方の生薬にあります。当帰芍薬散に使われる生薬は沢瀉(たくしゃ)芍薬(しゃくやく)白朮(びゃくじゅつ)茯苓(ぶくりょう)川きゅう(せんきゅう)、当帰(とうき)の6種で、配合量は当帰と川きゅうが各3g、その他は各4gです。

胃を荒らす可能性のある生薬はこのうち、当帰、川きゅう、白朮です。当帰と川きゅうは精油成分が多いため、とても香りが強く、そして香りの強いものは胃の粘膜を荒らしやすいのです。

より問題なのは白朮です。白朮は主要な気の強壮薬の一つとされ、脾や胃の虚証に特に用いられます。この生薬は中国では唐代から広く利用されています。

白朮(びゃくじゅつ)はキク科のオケラまたはオオバナオケラの根茎です。ただし、オオバナオケラは値段がひとけた高いので、日本にはほとんど入ってきません。そして、オオバナオケラとオケラでは作用が大きく異なるのです。オケラは利水作用(体内にたまった水分の排出)を期待して用いられる一方、オオバナオケラは消化機能促進作用を期待して用いられるのです。

つまり、オオバナオケラを使った当帰芍薬散である限り、胃腸障害を起こすはずがありません。ただ、前述のようにオオバナオケラは日本であまり使われず、消化機能には悪影響を及ぼすオケラの根茎が一般に白朮として使われますから、ほとんどの当帰芍薬散は胃腸によくないといわれるのです。そして漢方医ですら、当帰芍薬散の白朮がオケラかオオバナオケラかを区別することはできません。

このため当帰芍薬散を服用する時は、オオバナオケラに匹敵する消化機能促進作用がある人参を主成分とした人参湯(にんじんとう)を併せて飲んでください。

適応される主な症状

配合生薬

配合生薬の効能

当帰(とうき)

婦人病の妙薬として、漢方でひんぱんに処方される重要生薬の一つです。漢方では古来、駆お血(血流停滞の改善)、強壮、鎮痛、鎮静薬として、貧血、腰痛、身体疼痛、生理痛生理不順、その他更年期障害に適用されています。

茎葉の乾燥品は、ひびやしもやけ、肌荒れなどに薬湯料として利用されています。鎮静作用はリグスチライド、ブチリデンフタライド、セダン酸ラクトン、サフロールなどの精油成分によります。また有効成分アセチレン系のファルカリンジオールに鎮痛作用があります。

駆お血効果を裏付ける成分として、血液凝固阻害作用を示すアデノシンが豊富に含まれています。また、アラビノガラクタンなどの多糖体に免疫活性作用や抗腫瘍作用が認められ、抗ガン剤としての期待も、もたれています。

川きゅう(せんきゅう)

川きゅうには補血、強壮、鎮痛、鎮静があります。漢方では貧血、冷え性、生理痛生理不順など婦人科の各種疾患に利用されています。

有効成分のリグスチライドなどのフタライド類に筋弛緩作用や血小板凝集阻害作用が有ります。またクニジリットには、免疫活性作用が認められています。

古い医学書には性病による各種皮膚疾患、化膿性のできもの、疥癬(かいせん)などを治すと記載されています。

芍薬(しゃくやく)

芍薬は漢方処方で最もよく配合される生薬の一つで、主として筋肉の硬直、腹痛、腹部膨満感、頭痛、血滞などに広く処方されています。

主成分のモノテルペン配糖体ペオニフロリンには鎮痛、鎮静作用の他、末梢血管拡張、血流増加促進作用、抗アレルギー、ストレス性潰瘍の抑制、記憶学習障害改善、血小板凝集抑制などの作用が有ります。その他、非糖体ペオニフロリゲノンには筋弛緩作用が認められています。

茯苓(ぶくりょう)

茯苓には、利尿、強心、鎮痛、鎮静作用があります。漢方処方では利尿剤、利水剤、心悸亢進、胃内停水、浮腫、筋肉の痙攣などに茯苓を配合しています。

秩苓とは漢名で、植物名をマツホドと呼び、松の根に寄生するサルノコシカケ科の菌核です。秩苓は菌核に多糖類のβパヒマンを、それにテルペノイドやエルゴステロールなどの成分を含んでいます。

最近の報告では多糖類のパヒマンから誘導されたパヒマランに、細胞性免疫賦活作用が認められています。サルノコシカケ科に共通の抗腫瘍作用とともに、今後の研究が期待されています。

茯苓は民間薬としては使われず、まれに利尿を目的に煎液を飲む程度です。漢方でも配合薬としては汎用されますが、単独では用いません。

蒼朮(そうじゅつ)

朮は体内の水分代謝を正常に保つ作用があり、健胃利尿剤として利用されています。特に胃弱体質の人の下痢によく効き、胃アトニーや慢性胃腸病で、腹が張るとか、冷えによる腹痛を起こした場合などにもいいです。

日本では調製法の違いによって白朮(びやくじゅつ)と蒼朮(そうじゅつ)に分けられます。いずれも同じような効能を示しますが、蒼朮は胃に力のある人の胃腸薬として使い分けられています。

両者の主成分は、精油成分のアトラクチロンと、アトラクチロジンです。ちなみに、白朮には止汗作用があるのに対して、蒼朮は発汗作用を示します。朮は漢方治療では、多くの処方に広く利用される生薬の一つです。

沢瀉(たくしゃ)

沢瀉には尿毒症の改善、肝脂肪の蓄積抑制、利尿作用などが認められています。

これらにはトリテルペンのアリソールB、およびそれらのモノアセタートが関与しています。また、これらは血中のコレステロール低下作用を示すことが動物実験で確認されています。また免疫活性作用は含有多糖類による効果です。

漢方では利尿薬や尿路疾患用薬、鎮暈薬(ちんうんやく:乗物酔い防止薬)などに処方されます。

漢方薬の使用上の注意

漢方薬の副作用

更年期障害(こうねんきしょうがい)に処方されるその他の漢方薬

実証

中間証

  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
    お血のある女性の更年期障害や婦人科疾患に用いられます。血色不良、下腹部痛、足の冷え、のぼせ、肩こ り、頭痛、イライラなどがある場合に効果があります。
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
    更年期障害で、もっとも多く処方されるものです。女性の更年期障害、月経不順・月経困難症、自律神経失 調症などに用いられます。疲れやすい、不安、不眠、イライラ、頭痛、のぼせ、肩こり、便秘、冷え症など 、さまざまな症状に対応しています。
  • 女神散(にょしんさん)
    女性の更年期障害、月経不順、産前産後の神経症などに用いられます。のぼせ、めまい、みぞおちのつかえ 、胃もたれなど、さまざまな症状やはっきりしない不決感などに対応しています。とくにのぼせやほてり、 めまいをともなうときに有効です。
  • 温清飲(うんせいいん)
    女性の更年期障害、月経不順、血の道症などに用いられます。目標症状は不安、のぼせ、皮膚の乾き、出血 傾向などです。
  • 甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
    女性の自律神経失調症、神経症などに用いられます。悲観的な言動、興奮、不安、不眠などが目立つときに 選ばれます。
  • 五積散(ごしゃくさん)
    女性の更年期障害、神経痛、冷え症などに用いられます。胃腸が弱く、冷えると腰、関節、下腹部、足が痛 む、疲れやすいなどの症状があるときに選ばれます。
  • 川きゅう茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)
    女性にみられるかぜ初期の頭痛や、突発性の頭痛に用いられます。頭痛のほか、めまい、寒け、発熱など、 典型的なかぜ症状にも有効です。

虚証

  • 温経湯(うんけいとう)
    女性の更年期障害、月経不順・月経困難などに用いられます。口の渇き、下腹部の冷えと痛み、おりもの、 下痢、頭痛、腰痛、肩こりなどがあるときに効果的です。
  • きゅう帰調血飲(きゅうきちょうけついん)
    女性の更年期障害、月経不順、産後の低下した体力の改善などに用いられます。食欲不振、下痢、便秘、腹 痛、頭痛、めまい、のぼせなど、さまざまな症状に対応しています。
  • 柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
    女性の更年期障害、神経症、不眠症、心臓神経症などに用いられます。やせ型で血色不良、冷える、口が渇 く、動悸や息切れなどの症状があるときに有効です。
  • 四物湯(しもつとう)
    胃腸障害がない女性の更年期障害、月経不順、冷え症などに用いられます。血行をよくする効果があります 。皮膚がカサついて色つやが悪い、手足の冷え、貧血、目のかすみがある場合に選ばれます。
  • 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
    胃腸が弱く、冷え症がある女性で、更年期障害の症状のなかでも頭痛、めまいが強い人に用いられます。そ のほか、肩こり、頭重感、吐き気、食後の手足のだるさにも有効です。
  • 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
    女性の肥満症、関節痛、多汗症、むくみなどに用いられます。水ぶとりで色白、むくみやすく、疲れやすい 、尿量減少などの症状があるときに選ばれます
  • 抑肝散(よくかんさん)
    女性の神経症、不眠症、などに用いられます。神経が過敏で興奮しやすい、怒りっぽい、まぶた や顔の筋肉がけいれんするなどの症状がみられるときに有効です。
  • 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
    更年期障害の症状のなかでも、立ちくらみやめまいの強い人に用いられます。そのほか、動悸、のぼせ、尿 量減少などがあるときに効果があります。

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漢方薬は、自分の証に合ったものをお選び下さい。

「証」とは体力、体質、症状などから患者さんの状態を総合的に観察した診断結果のことです。

  • 実証は生理機能が高まった状態を意味して、外見は健康そうに見えます。
  • 虚証は体力がなく、生理機能が衰え、抵抗力も低下した状態を意味します。
  • 中間証は実証または虚証のどちらも偏らず、それぞれの特徴を半分ずつもつ場合を意味します 。

「証」の判定は証の自己判定テストご利用ください。


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